米シアトル市、大企業への課税法案を一カ月で撤回

米Amazonの成功も寄与して火が付いた米シアトル市の好景気は、シアトルを米国で最も急成長を遂げる都市の一つに押し上げた。
しかし、住宅コストが上がり、ホームレス人口が急増する事態も招いた。

シアトル議会は全米3位のホームレス人口に対処するため、2000万ドル(約22億円)以上の収益がある企業に対して従業員1人当たり275ドルを課税する法案を可決した。今回の課税は、IT(情報技術)企業の急成長による影響の責任を誰が取るのかという議論を具体化したものだ。しかし、わずか1カ月足らずでの法案撤回となった。

シアトル市はAmazonなど大手企業からの圧力を受け、シアトル市のJenny Durkan市長が法令撤回の計画を発表した。「この法令が長く、費用のかかる政治論争につながることは明白だ。急を要する住宅やホームレス危機対策にはなんら役立たない」とした。

今回の課税は、アマゾンやスターバックスなどシアトルの大手企業から激しい反発を受けた。シアトルで4万人以上を雇うアマゾンは、市内での大規模建設プロジェクトを棚上げした。その他にも、オンライン小売業者はシアトル本社近くの新しい高層ビルの建設計画を一時的に停止した。市が当初提案していた1人当たり500ドルという税額を減額して妥協した後も、全ての関係者に不満が残った。

アマゾンは、5月14日の(新税導入の)法案可決を受けて「失望した」とした上で、「大手企業に対する市議会の敵対的な姿勢と発言で生み出される将来を非常に危惧しており、シアトルでの成長に疑問を持たざるを得ない」と表明した。

アマゾンやスターバックスなどの企業は20万ドル以上の資金を拠出、人頭税撤回を11月の選挙時に住民投票にかけるため、合同で署名を集めてきた。

ホームレス擁護派は、課税で入る予定だった4500万ドルの税収ではシアトルの問題への対処には不十分だと指摘した。州が所得税課税を禁じているため、歳入を増やす手段が非常に限られている。

シアトルでの結末をよそに、大手IT企業の本社がある他の都市も同様の措置を検討している。

カリフォルニア州では、米グーグルの親会社アルファベットの本社があるマウンテンビューやアップルの本社があるクパチーノも、大手企業への課税を検討中。人頭税は、ツイッターや配車アプリのウーバーテクノロジーズ、顧客情報管理(CRM)大手のセールスフォース・ドットコムといった企業の本社があるサンフランシスコでも提案されている。

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